2024年度日本地方自治研究学会学会賞
〈著書部門〉
1.受賞者 原田悠希氏(東海大学)
2.受賞作品 『社会保障制度における社会手当の成立・展開過程―中央地方関係の視点から』日本評論社、2024年1月刊行。
3.受賞理由
本著作は、日本の社会保障制度のうち社会手当を取り上げ、その創設の1960年代から現在までの展開過程について中央・地方の関係に着目して分析を行い、社会手当が十分に発達してこなかった要因を明らかにし、今後の社会手当の発展の可能性を探っている。
本書では、現金給付の社会保障制度は国がその責任を負い財源は全て国庫負担とすることが理論上望ましいとし、しかし実際には社会手当は実施事務と財源は地方公共団体が負担しているものがあるとして、ここでなぜこうした制度が創設され拡大してきたのかをその成立・展開過程に関する政策決定過程をとおして事例研究とともに解明している。ここで研究方法として、関係省庁の公文書や内外の関連文献を渉猟し詳細な資料とともに分析を行っている。
分析結果では、現行の社会手当はその成立過程から中央地方の関係は関係省庁間の妥協の産物であり理論から乖離した制度として固定化してきたと結論づけ、社会手当は地方に事務委託しなくとも国がその財源の中で効果的・効率的に現金給付を行うことが可能であることを説得的に論じ、ここから新たな年金被保険者支援給付金(仮称)の創設を提言して括っている。
本書は、社会保障制度の中でもそれほど論じられなかった社会手当を理論を踏まえてその展開を究明し今後の可能性にも論及しており、日本地方自治研究学会の研究発展に大いに貢献する意欲的な著作として学会賞に値すると評価するものである。
〈論文部門〉
該当なし