著作部門

 

 該当なし。

 

 

論文部門

 

1.受 賞 者  高 哲央氏(明治大学)

 

2.受賞論文  「全国市町村における固定資産税収の偏在とその要因」

        『地方自治研究』Vol. 34, No. 2201911月。

 

3.受賞理由

 本論文は、高氏がこれまで固定資産税の研究を続けてきた中で、市町村税としての偏在性と負担の格差について着目し、実証分析により課税客体別(土地、家屋、償却資産)にその要因を考察したものである。ここでは市町村(特別区除く)を人口と産業構造で分類し、仮説に基づいて偏在性の要因をデータ解析により明らかにしている。偏在性の尺度としては、標準偏差係数の二乗の値を用いて分析している。この点はこれまでの先行研究には見られない新規性もあり高く評価できる。分析結果は、偏在性の低い税とされてきた固定資産税は市町村単位では経済活動水準が低い地域(人口密度が低く第1次産業の比率が高い)ほど大きいことを証している。その要因としてあげているのは、データ値から償却資産課税が影響しているとしている。確かに大規模償却資産は地方に設置されていることが多く、そうした税収が大きく影響していることを実証したことは、学問的な発展に貢献することが認められる。ただし本論文にも述べられているように、分析手法や設定に改善の余地が残されており更なる研究が期待される。例えば、大規模償却資産の所在市町村とそれ以外の市町村を別にしてその分の影響を取り出して検証するとより検証結果が鮮明になるのではなかろうか。

以上により、論文部門の学会賞に値するものと評価する。