著作部門

 

 該当なし

 

 

論文部門

 

1.受賞者  永   也(四国大学)

 

2.受賞論文 「交通政策の展開と今後の課題−徳島県内のバス事業の事例から−」

              (日本地方自治研究学会誌『地方自治研究』Vol.26  No.1、2011年3月)

 

3.受賞理由

 本論文は、本学会会員による共同研究「地方公営バス事業が抱える課題と今後のあり方の研究」における著者の担当部分を基に作成されたものである。現代の、いわゆるモータリゼーション・スパイラルを受けて、地域公共交通の衰退は不可避どころか、時間とともに加速の度合を強めており、特に、高齢化の進展が急な、地方において事態は深刻である。また同時にそれは、中心市街地の活性化へのバリアを高め、畢竟、自治体経営に負の力を加えることになる。このような状況に対してよりよい処方箋を見出すのは至難の業に思われるが、著者は、徳島県内のバス事業を事例に、多数の調査データを精細に検討し、および歴史的変遷と、諸制度や組織上等の問題点を巧みに俎上に載せて分析を試み、地域公共交通の再生のための系統的な究明を行った。そこでは、従来の公共交通政策は実際には、地域政策・都市政策とのシステム的なリンクとして捉えられて来なかった欠点が指摘されている。都市の再生と公共交通の再生は一体的に行われる必要があるとの提言は、首肯するに十分である。

 地域公共交通政策に関する問題解決において有効な知的基盤となりうる成果を得て、本論文は、今後、この領域での研究と実践の場で寄与するものが大きいと思量される。