著作部門

 

 該当なし

 

 

論文部門

 

1.受賞者  藤   弘(大手前大学)

 

2.受賞論文 「官民連携地域ポータルサイトにおける信用の源泉に関する考察と

        行政情報アクセスの実証分析」

              (日本地方自治研究学会誌『地方自治研究』Vol.25  No.1、2010年3月)

 

3.受賞理由

 誰もが適切なタイミングで容易かつ安心・安全に地域情報システムにアクセス可能な利用環境の整備は、地域情報化に必須の要件である。よって情報資源利用の入り口としてのポータルサイトの充実の如何は、その情報システムの良否を分ける第一の関門と言える。本論文はまさに、この分野の活動が何によって保証されるのか、その成立の由来と基盤について問い、究明を試みた研究の成果である。すなわち、地域情報化の先進的な施策である「官民連携による地域ポータルサイト」に焦点を当て、住民意識調査とアクセスの実績データから、利用者が信頼しうるシステムの条件を実証的に分析し、この種の政策のあるべき方向を論じている。

 地方自治体は、重要な情報化施策として、行政情報と民間情報を一つのWebサイトから取得できる官民連携地域ポータルサイトの構築を模索している。そして、これには連携の対象となる情報発信企業を選択する際の正当性と公平性の確保、およびそのポータルサイトから発信される情報の信憑性と事業継続性の担保の観点からの、組織選定への事前の検討が必要になる。しかしながら、この施策に対して住民がどのように評価しているかを把握するのが望ましいにもかかわらず、十分な検討が行われないままに事業が実施されるとすれば、それは非常に疑問である。

 本研究では伊丹市における官民連携地域ポータルサイトに対しての上記の調査等のデータを解析し、評価状況を検証している。運営組織に求められる要件とその組織に対する信用を形成する要因分析にはAHPの技法を援用している。また、Web評価の重要な指標であるアクセス実績の分析から、企業による当該システムの運営は、住民から一定の評価がなされていることが分かった。

 本論文は、官民連携に必要とされる組織に求められる要件と、官民連携による地域ポータルサイトの有用性を解明した先駆的な研究であると評価できる。今後、この領域での研究と実践の場で寄与するものが大きいと思量される。