著作部門
1.受 賞 者 佐 藤 徹(高崎経済大学)
2.受賞著作 『自治体行政と政策の優先順位づけ』
(大阪大学出版会、2009年3月刊行)
3.受賞理由
わが国の地方自治体においては、限られた財源のもとで幾多の政策目標を達成するために優先的に取り組むべき行政活動を明らかにし、適正な資源配分を行うための確たる手法が存在しているわけではない。予算編成においてこれまでのような一律カットのシーリング方式ではなく、部局別又は施策別に予算を配当する枠配分予算制度を実施する自治体も見られるようになっているが、明確な基準のもとで合理的に優先順位づけがなされているものは数少ない。
こうした状況において、著者は第1に政策の優先順位づけを行う場合の基盤となるシステム、すなわち総合計画、行政評価、予算編成が相互にどのような関係を形成すべきか、第2に政策の優先順位づけを支援する手法は存在するか、存在するとすればそれはどのようなものか、そして第3に、政策の優先順位づけは困難であるが、この点について自治体職員はどのような意識構造を有しているかを明確にし、自治体再生への知見を見い出そうとする。
地方自治体行政の政策形成における計量的、科学的分析研究を行う本著作は、実際の自治体行財政改革に際してもきわめて有益なものである。依って、日本地方研究学会賞の授与に値するものである。
論文部門
1.受賞者 八 木 裕 之(横浜国立大学)
丸 山 佳 久(広島修道大学)
大 森 明(横浜国立大学)
2.受賞論文 「地方自治体における環境ストック・フローマネジメント
――エコバジェットとバイオマス環境会計の連携――」
(日本地方自治研究学会誌『地方自治研究』Vol.23 No.2、2008年8月)
3.受賞理由
本研究は、地方自治体の環境政策について大気、水、土地、森林、生態系などの自然環境を表わす環境ストックとその物的・質的変化である環境フローとの有機的な連携を念頭におき、地球温暖化問題の観点から環境ストックとしての森林ストックに焦点を当て地方自治体がこれを持続可能なかたちでマネジメントして行くために必要な環境ストック・フローマネジメントのモデルの開発を試みたものである。
本研究は、文部科学省「一般・産業廃棄物・バイオマスの複合処理・再資源化プロジェクト」の研究の一環であり、本論文における環境ストック・フローマネジメントのモデルへの分析と提示はきわめて有益なものである。依って、日本地方自治体研究学会賞の授与に値するものである。