著作部門

 

1.受賞者  吉川 宏延(神戸市役所)

 

2.受賞著作 『法人住民税のしくみと実務』

                (税務経理協会、2007年12月刊行)

 

3.受賞理由

 吉川氏の執筆にかかる本書によれば、「法人住民税は、個人住民税の補完税と位置付けることができる。特に、都市部においては、ビジネス目的の非定常的人口移動が今後、ますます増えていくであろうことからすると、個人住民税の補完税として、法人住民税の役割は、さらに重要になる」とされ、法人住民税の基礎理論と基本問題について、その体系化を試みたのが本書である。従来、法人住民税は十分に論究される機会が少なく、しかも体系的に検討されることが稀有なことであった。本研究では、法人と住民税、納税義務者、法人均衡割、法人税割、連結納税制度、および申告納付と更正・決定など法人住民税の総合的な考察を加えている点では、本書を高く評価しうる。よって日本地方自治研究学会賞に値するものである。

 

 

 

論文部門

 

1.受賞者  岸  秀隆(公認会計士)

 

2.受賞論文 「財政赤字概念に関する考察」

(日本地方自治研究学会誌『地方自治研究』Vol.23 No.1、2008年3月)

 

3.受賞理由

 岸氏の執筆にかかる「財政赤字概念に関する考察」は、「日本の政府や各地方公共団体の財政赤字が具体的にどれくらいあるかが明確に示されて」いないし、「政府や地方公共団体の財政赤字とは何か」ということさえも明確に合意されているわけではない、という。本論文は、したがって財政赤字概念をより明確にすることを目的としている。著者は、官庁会計の財政赤字、財政学の財政赤字、発生主義会計による財政赤字に分類して、そこでの赤字概念の明確化につとめている。その際、財政の流れをストックとフローに分けて具体的な赤字の要素を表現している。従来、主として税収以上に政府支出をするのを捉えて財政赤字としていたのを、本論文ではかなり詳細な概念化を試みており、こうした分野の研究にとって最先端の論究といえる。よって本論文は日本地方自治研究学会賞に値するものである。