著作部門

 

1.受賞者  野 田  遊(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

 

2.受賞著作 『都道府県改革論 ――政府規模の実証研究

                (晃洋書房、2007年7月刊行)

 

3.受賞理由

 著著の『都道府県改革論 ――政府規模の実証研究』は、「地方政府体系における広域政府の規模のあり方に関して実証的に検証したもの」であり、その際、「広域政府とは府県よりも広域の政府である道州をさしている」としている。「第1章 府県を取り巻く環境の変化」、「第2章 府県機能の検証」、「第3章 市町村合併と府県の役割の変化」、「第4章 地方政府体系の統合・分化からみた広域政府の規模」、「第5章 政治参加からみた広域政府の規模」、「第6章 府県連携による政策の限界」、「第7章 中心−周辺府県関係からみた広域政府の規模」、「終章 わが国における広域政府の規模のあり方」の8つの章建てをもって構成される。

 この著作は一貫して、都道府県改革や道州のあり方についての検証作業を行い、広域政府としての道州の規模に関して一定の方向性を見い出している。すなわち、緻密な実証研究により現行府県間の多元的な財政行動の非効率が析出され、社会資本整備の側面からは周辺府県の経済活性化にも中心府県への投資が効果的であることを検証しており、ここに道州制導入の重要な論拠となる統治単位の一元的対応の必要性を明らかにしている。本研究は、広域政府としての道州のあり方について、従来行われてこなかった実証研究として今後きわめて重要な貢献をするものと思料される。

よって本著作は日本地方自治研究学会賞に値するものである。

 

 

論文部門

 

1.受賞者  徐   龍 達 (桃山学院大学)

 

2.受賞論文 「韓・日比較からみた定住外国人の地方参政権」

(日本地方自治研究学会誌『地方自治研究』Vol.22 No.1、2007年3月)

 

3.受賞理由

 本論文は、著者が多年にわたり傾注してきた、日本における定住外国人参政権についての運動と研究を背景として執筆されたものである。その狙いは、参政権の具体的行使である選挙権の確立について焦点を据えているが、「今後の日本および地方自治体のあり方を共に考える契機にしたい」として、地方選挙権問題を広く地方自治の問題としてとらえている。

 本論文は、「(1)はじめに――画期的な最高裁判決」、「(2)社会構成員としての“近代市民”の新展開」、「(3)諸外国における定住外国人参政権の動向」、「(4)アジア初の定住外国人選挙権(韓国)」、「(5)永住外国人に対する地方選挙権法案(日本)」、「(6)むすびに代えて――地方選挙権の韓・日比較」から構成される。この構成から見るように、日本における地方選挙権の付与・確立を韓国を含む諸外国の動向分析から比較論及した視座構造の点で、本論文の総合性と独創性を指摘できるものである。今後、この領域での研究と実践の場において寄与するものがきわめて大きいと評価できる。

 よって本論文は日本地方自治研究学会賞に値するものである。