家族信託をもちいた財産の管理・承継
47/52

第3節 受託者227受託者 1 家族の一員が就任する場合[1] 不祥事を起こさないことの重要性家族信託は、成年後見制度の代替手段として利用されることも多い。ところで、成年後見制度では、後見人による横領等の不祥事が多発し社会問題にもなった。その結果、後見制度支援信託の活用や被後見人に一定以上の流動資産がある場合には後見監督人の選任を行う等の不祥事対策が取られるようになった。成年後見制度における後見人の不祥事の問題は、家族信託における受託者も無縁ではない。むしろ、裁判所の監督が及ばない家族信託の受託者のほうが不祥事を起こしやすいといえる。今後、家族信託を普及させるためには、家族信託をめぐり不祥事を起こさないようにする必要があり、特に、受託者による横領等の不祥事には細心の注意が必要である。[2] 信託法の規律に詳しくないこと家族の一員が受託者になった場合、その受託者は信託法における受託者の規律について詳しくないことが一般的である。受託者の義務に関しては、善管注意義務(信託法29条2項)、忠実義務(同法30条~32条)、分別管理義務(同法34条)が重要である。受託者は、このように信託法により重い義務が課せられているだけではなく、通常、信託契約に基づき、受託者の義務が加重されている場合もあ3第3節 受託者

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る