家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第2節 委託者の意思能力223得ないことに加え、受益権の配分や信託財産の最終帰属先に不満を持つ相続人からは、信託設定時の委託者の意思能力の欠如を主張され、信託が無効となるおそれもある。そのような事態とならぬよう、家族信託の活用にあたっては、委託者の意思能力が十分であるのかどうかをしっかりと確認することが重要であり、コーディネーターや受託者、相続人も含めた被相続人を取り巻く関係者は、意思能力に不安のある被相続人へ安易に家族信託を薦めるような提案、コンサルティングを行うべきではない。2 意思能力と認知症意思能力の有無の判定にあたっては、その時点での心神耗弱や酩酊の状況、精神疾患の有無等の様々な要素を総合的に考慮していく必要があるが、高齢者については、認知症の発症状況を確認することが重要である。認知症とは、「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」[64]等と定義され、その進行状況は様々であるが、以下の表のとおり、加齢に伴い有病率が高まる傾向にある。【図表3-2-1】数学モデルにより算出された2012年の性・年齢階級別認知症有病率[65]65-69歳70-74歳75-79歳80-84歳85歳以上男性1.94%4.30%9.55%21.21%47.09%女性2.42%5.38%11.95%26.52%58.88%内閣府の「平成28年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計は、2012年は認知症患者数が462万人と、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)であったものが、2025年には約700万人、5人に1人(有病率20%)になると見込まれている。なお、厚生労働省の調査によると、2016年の男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳であり、例えば平均寿命近辺で死後の相続が気になり家族

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