家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第3章 家族信託の関係者の留意事項218ビルの所有者から委託を受けて、そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除したうえで各室を明け渡させる等の業務を行ったという事案について、「立ち退き合意の成否、立ち退きの時期、立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり、弁護士法72条にいう『その他一般の法律事件』に関するものであったというべきである」と判示した。当該判示については、「事件性のような要件を全く必要としないとする立場には立っておらず、争いや疑義が具体化又は顕在化していることまでは要しないとしても、事件性必要説に親和的な立場と理解できるように思われる」と指摘されている[63]。上記最決を踏まえ、「その他一般の法律事件」の要件については一定の事件性があることが必要となるという見解に立った場合、少なくとも家族信託の組成の場面では、当事者間において法的紛議は生じていないことが通常であると思われるため、このような場面においてアドバイザーがアドバイザー業務等を業として行ったとしても、弁護士法72条に違反するものではないという解釈もあり得ると考えられる。なお、司法書士がアドバイザー業務等を業として行うことは、司法書士法上の本来的業務(司法書士法3条1項1号ないし5号)及び附帯業務(同法29条1項1号、司法書士法施行規則31条)には該当しないと考えられる。同様に、税理士がアドバイザー業務等を業として行うことは、税理士法上の税理士業務(税理士法2条1項)及び付随業務(同法同条2項)には該当しないと考えられる。[62] 日本弁護士連合会調査室『条解 弁護士法〔第4版〕』(弘文堂)615~617頁[63] 法曹会『最高裁判所判例解説 刑事篇 平成22年度』(法曹会)〔三浦透〕116頁3 銀行法12条(他業禁止)との関係について銀行は他業を営むことが禁止されているため(銀行法12条)、銀行がアド

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