家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第2節 相続人等への財産の承継145指示をしていた。しかしながら、Aが高齢となってきたことに伴い、審査・契約・管理会社への指示等の管理が困難になってきていると感じている。Aはもともと、自身の資産のうち不動産については長男Bに、有価証券については次男Cに承継しようと考えていたので、これを機に不動産管理についてはBに委ね、そのままBに承継できたらよいと思っている。そこで、信託を活用して、不動産の管理をBに委ねたうえで、自身の生存中は不動産賃貸による収益を自身の生活のために使い、自身の相続開始と同時に、不動産をBに承継させることが考えられる。この場合、かかる信託の委託者兼受益者はA、受託者は不動産管理を行うBとなり、Aの所有する賃貸用不動産(と若干の金銭)を信託財産として、これらの不動産の管理・運用により、Aの生活を支援するとともに、(最終的に)Bに不動産を承継することを目的とする信託を設定することになる。この信託の信託期間はA死亡時までとしたうえで、帰属権利者としてBを指定し、信託終了により、信託財産についてはBが取得することとすることで、Bに不動産を円滑に承継することができる。(2) 信託設定時の対応信託設定時に、委託者であるAと受託者であるBは、信託財産である不動産について、信託を理由とする登記を行い、かかる不動産のBへの所有権移転登記を行う。これと同時に、AとBの連名により、賃貸人の地位の承継について、各賃借人に対して通知を行い、賃料収受口座の変更等について通知する。これに先立って、賃貸用不動産の賃料収受口座を受託者であるB名義で開設しつつ、当初不足する諸費用に充てるために信託財産とした金銭についても、当該口座に入れて管理することで、この信託のための金銭の管理を銀行口座で独立して行うことになる。この点、信託法上の分別管理義務の内容としては、金銭については、その計算を明らかにする方法によれば

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