家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第1節 高齢者・子供の財産管理109(2)預金の信託実務上、委託者の預金を当初信託財産とする例がみられるが、預金については譲渡禁止特約が付されていることが一般的であるため、委託者の預金を当初信託財産とするのではなく、委託者が保有する金銭を当初信託財産とすべきである。(3)信託の効力発生時期信託契約は諾成契約であり(信託法4条1項)、信託財産の引渡しは必ずしも信託の効力発生と同時に行わなければならないわけではない。しかしながら、信託の効力が発生しつつ、信託財産の引渡しがなされていない場合、受託者としては、信託財産を管理下に置かないまま受託者としての義務を負うことになりかねないから、実務上は、信託契約締結と同時に信託財産の引渡しを行うか、または信託の効力発生時期を信託財産の引渡しと同時にすることが考えられる。例えば、金銭について信託を設定する場合であって、かつ、信託契約締結後に当該金銭を受託者名義の預金口座に振り込むことを想定している場合には、信託の効力発生時期を振込の時点とすることが考えられる。なお、不動産について信託を設定する場合には、いつから信託財産が固定資産税や都市計画税を負担することになるかも明確にしておくことが望ましい。基本的には、引渡日の前日までは委託者、引渡日以後は信託財産がこれらを負担することになると考えられる。(4)信託不動産の登記登記または登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産が信託財産に属することを第三者に対抗するためには、信託の登記または登録をすることが必要である(信託法14条)。そこで、不動産について信託を設定する場合には、信託契約において、契約締結後直ちにかかる登記を行わなければならないことを規定すべきである。また、登記費用を委託者と信託財産のいずれが負担するかについても規

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