家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第1章 家族信託における法律72る所得はパススルーにより受益者段階で取り込まれ、受託者段階で独立に課税されることはないという原則が定められている。一方で、受益者等課税信託については、受益者が信託財産を有するとみなすことから、従来、信託において発生する損失について受益者が影響することに関して何らの制限もなかったが、信託法改正により信託の利用機会が大幅に拡大すると考えられること等から、課税の中立性・公平性確保の観点で、平成19年度税制改正で、信託損失に関する法整備がなされた。具体的には、①個人受益者の不動産所得に係る損益通算の制限(措法41条の4の2)、②法人受益者の信託損失の損金算入制限(同法67条の12第1項、措令39条の31第3項3号)等の規定が設けられている。[3] 信託設定時の税務(受益者等課税信託の場合)家族信託は、税務上は受益者等課税信託に該当することが一般的であると考えられる。そこで、以下、信託設定の各段階ごとの原則的な課税関係を概観しよう。なお、負担付贈与、グループ法人税制は考慮していない。(1) 設定時に委託者=受益者等の場合委託者と受益者がそれぞれ一であり、かつ、同一の者である場合の受益者等課税信託においては、実質的な信託財産の移転はないため、信託設定による課税関係は生じない(所基通13-5、法基通14-4-5)。(2) 設定時に委託者≠受益者等の場合次のような課税関係が生じる。なお、家族信託であるから、委託者が法人であるケースは考慮しないが、受益者等が一般社団法人等であるケースもあるため、受益者等が法人であるケースも検討する。① 対価の支払いがない場合委託者 (個人):課税関係なし受益者等(個人):みなし贈与、相続税委託者 (個人):みなし譲渡

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