家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第2節 家族信託において適用される相続法の規制47する民法の規定が類推適用される(神田秀樹・折原誠『信託法講義』(弘文堂・2014年)30頁)。また、信託契約(信託法3条1号)についても、遺言による信託と同様、遺贈に関する民法の規定が類推適用されると解される。例えば、委託者が受託者との間で、当初受益者を委託者自身とし(自益信託)、委託者(兼当初受益者)の死亡により、当初受益権が消滅し、第二次受益者が受益権を取得する内容の信託契約を締結した場合には、委託者(兼当初受益者)の死亡により、第二次受益者が委託者(兼当初受益者)の財産を承継した場合と同様の効果が生じるため、遺贈の規定が類推適用されると考えるべきである。[3] 問題となる事例信託行為に遺贈に関する規定が適用ないし類推適用されるかについては、具体的に、①信託行為によって、被相続人が委託者として、一部の法定相続人を受益者に指定し、無償で受益権を与える行為が民法903条1項で規定している特別受益に該当するか、②被相続人が委託者として、法定相続人の遺留分を侵害する内容の信託行為を行った場合に、遺留分を侵害された法定相続人は、遺留分の減殺請求(民法1031条)をどのような財産を対象に、誰に対し行うことができるか、③相続人が信託契約に基づき受益権を取得しながら、相続債務に関しては相続放棄(同法915条、939条)をすることができるか、等が問題となる。 2 信託と法定相続・遺言[1] 信託と法定相続相続とは、被相続人の死亡によって、被相続人の権利義務を相続人が承継することをいう。相続財産は、被相続人の相続開始時の財産であり、積極財産(権利)だけではなく消極財産(義務)も含まれる。信託と相続に関しては、被相続人の死亡以前に信託が設定されていた場合に、その設定された信託と相続との関係が問題となる。具体的には、信

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