家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第1章 家族信託における法律46家族信託において適用 される相続法の規制1 信託法と相続法の関係[1] 信託法と相続法相続法は、相続、すなわち自然人の死亡により、その者の財産法上の権利義務を他の者に承継させることを規律した法律である。一方、信託法は、財産の管理及び財産の承継を実現するための法律である。信託法のうち、後者の財産承継の面が相続法とどのような関係にあるのかが問題となる。この点、信託法も相続法も、いずれも私人間の関係を規律する実体法であり、互いに排斥する関係にあるものではない。後述のとおり、信託法に基づいて行われる信託行為(信託を設定する法律行為)[3]にも相続法の規定が適用ないし類推適用されると解される[4]。[3] 信託行為には、①信託契約、②遺言による信託及び③信託宣言がある(信託法2条2項)。[4] 信託法と相続法との矛盾を指摘する見解もある(水野紀子「親族法・相続法の特殊性について」平井宜雄先生古稀記念『民法学における法と政策』(有斐閣・2007年))。信託法と相続法の関係を検討した論稿として、沖野眞已「信託法と相続法-同時存在の原則、遺言事項、遺留分」水野紀子編著『相続法の立法的課題』(有斐閣・2016年)。[2] 信託行為と相続法遺言による信託は、遺言によって信託を設定することをいう(信託法3条2号)。遺言による信託は、遺言により信託の設定を行うものであり、遺贈に関2

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