家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第1節 家族信託の活用に有用な信託法の規律13[3] 帰属権利者の指定との差異信託においては、帰属権利者(信託法182条1項2号)の定めを置くことにより、信託終了後の財産の帰属者について指定することができる。その意味では、遺言と同様の役割を果たすだけであれば、帰属権利者の定めを置くことで足りる。一方で、遺言代用信託については、指定された受益者による承継後も信託を継続させることができるため、この点で帰属権利者の定めを置く信託とは異なる。また、帰属権利者については、信託行為の定めにより置くものであることから、遺言のように自由に承継者を変更することができない。遺言代用信託であれば、受益者変更権を有することから、委託者が受益者を変更することが可能である点にメリットがある(この点は遺贈についても実質的に同様である)。逆に、信託行為で、受益者変更権を有しないと定めることも可能であるため、柔軟な設計が可能なものということもできる。3 後継ぎ遺贈型受益者連続信託[1] 後継ぎ遺贈型受益者連続信託とはいわゆる「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」とは、委託者の死亡後に、受益者が複数連続して定められている信託のことをいう。例えば、委託者が、当初は自らを受益者とし、委託者が死亡後、委託者の配偶者を、その配偶者の死亡後は、長子を受益者とするといった形で、委託者の死亡後にも、複数の受益者を(同時並行ではなく)連続して定めることになる。後継ぎ遺贈型受益者連続信託において、受益権は、後継受益者に対して承継されるのではなく、各受益者が、それぞれ異なる受益権を原始的に取得するものと考えられている。民法においては、受遺者を複数連続して定めることはできないため、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託についても、以前はその有効性について疑義

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