家族信託をもちいた財産の管理・承継
27/52

第1章 家族信託における法律12たって受益者としての収益を得ることを期待して、不測の損害を被るおそれがある。そこで、受託者は、信託行為で別段の定めがない限り、受益者変更権の行使により受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない(信託法89条4項)。なお、受益者指定権等は、原則として相続により承継されない(同法同条5項)。 2 遺言代用信託[1] 遺言代用信託とは 「遺言代用信託」とは、委託者が信託を活用して、遺言の代わりに財産の承継について規定をしたうえで設定する信託を指していう。例えば、高齢者である委託者が、信託銀行等に自らの財産を信託して、委託者の死亡時に委託者の配偶者が受益権を取得する旨の受益者指定権の定めを置く信託が考えられる。遺言代用信託の設定により、自身の死亡後の財産の分配を行うことが可能となることから、遺言や死因贈与と類似する機能を果たすことになる。よって、遺言代用信託についても、遺言(遺贈)や死因贈与と同様の考え方がとられている。[2] 遺言代用信託に関する信託法の規定信託法では、遺言代用信託に関し、①委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託、または、②委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託における委託者は、受益者変更権を有するとされている(同法90条1項)。②の委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託について、当該受益者は、委託者が死亡するまで、受益者としての権利を有しない(同法同条2項)。これらについては、信託行為において、別段の定めを置くことが可能である。

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る