家族信託をもちいた財産の管理・承継
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序―はじめに7 また、受益者と受託者の間における利益相反に留意する必要がある。受託者が残余財産受益者や帰属権利者に指定されているケースが典型的である。[2]関与専門家による受託者の監督・サポート また、受益者が高齢の場合には、受託者に対する監督が十分に行われなくなるおそれがある。受益者保護や信託事務遂行の監督等を行うものとしての受益者代理人・信託監督人、信託事務受託者を担う専門家の存在が必要である。[3]信託銀行による受託者のサポート まず、分別管理のできる信託口口座の対応ができるような体制を整える必要がある。受託者の能力に懸念がある場合には、高齢者の財産の安全を確保する商品、家族・親族の生活の安定を確保する商品、次世代への確実な財産の承継をする商品等のファミリートラスト商品の提供等を通じて対応できれば、家族信託を営業信託として切り替えることが可能である。信託銀行は、常に営業信託の商品の開発に積極的でなければならない。また、個人受託者をサポートする仕組みに敏感でなくてはならず、例えば、家族信託受託者の財産管理能力に不安のある場合は、個人受託者と信託銀行との共同受託や受託者を委任者とし信託銀行を受任者とする事務委任契約を結ぶことで、実質的に受託者の事務サポートを考えていくことも信託のプロとして必要であろう。4.まとめ 家族信託を取り巻く環境は、近時大きく変化してきているが、まだまだ不完全で課題も多い。家族信託を高齢社会の財産管理や財産承継の対応策と考える場合、信託を社会の公器と考え、専門家のアドバイスにより適切に利用しなければならない。信託の本質である「財産権の移転」を伴わない信託の利用は慎重であるべきであるし、委託者の判断能力、受託者の信託

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