家族信託をもちいた財産の管理・承継
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序―はじめに11.家族信託の近時の動向 高齢社会の急速な進展に伴い、近年、個人の財産管理や財産承継を目的とする家族信託への関心が高まっている。 高齢に伴う判断能力の低下に対する対応としては、これまで民法上の委任や成年後見制度を検討することが多かったが、成年後見制度は硬直的で使いにくく、また不正も多いという批判もあり、意思凍結機能・受益者連続機能を特徴に持つ家族信託に注目が集まっている。社会的な関心の高さを裏付けるようにTVや雑誌では特集が組まれ、書店の棚には家族信託の書籍が多く並ぶようになった。 家族信託が活発に利用されるようになった背景には、①士業を中心とした家族信託をサポートする信託実務家が台頭してきたこと、②これまで受託者との取引に消極的であった金融機関が信託口口座の開設等門戸を開き始めたこと、③家族信託は、家族が受託者であるため従前の生活が維持でき、管理コストも低廉なこと、④信託銀行等において、個人の財産管理や財産承継、後見制度に関する信託商品を提供するようになってきたが、まだ不十分であること等が挙げられる。 特に、この1~2年の家族信託の利用の急増は目を見張るものがあり、士業(団体)が高齢者対策として家族信託の利用を積極提案していること、遺言代用信託や後継ぎ遺贈型受益者連続信託等の多様なニーズへの対応が進んだことが直接の要因と考えられる。 具体的には、後述する一般社団法人家族信託普及協会の会員による平成28年1月~12月の組成件数は約140件、平成29年の組成件数は400件が見込まれている。また、筆者の所属する信託銀行においても、信託口口座の提供を全店鋪で開始した平成28年5月から平成29年3月までの開設申込序―はじめに

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