親権・監護権をめぐる法律と実務
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105第2章 親権・監護権が問題となる場面第2章 親権・監護権が問題となる場面が関与した上で形成された合意に反して、一方の親権者が子どもを返さなかった(連れ去った)もので、裁判所における合意に違反したという点では、家裁の保全処分等に従わない場合(前掲最高裁平成6年4月26日判決で挙げられた「明白性の要件」の具体的内容①の場合)に準じる違法性があると評価することもできます。したがって、上記ⅰⅱの裁判例によって、前掲最高裁平成6年4月26日判決で挙げられた「明白性の要件」の具体的内容が拡大されたと評価すべきではないでしょう。2 離婚後の夫婦間における子どもの引渡し請求⑴ 親権者・監護者である親から非親権者・非監護者である親に対する請求 具体的な場面としては、① 親権者の親が非親権者の親に対して子どもの引渡しを求める場合② 離婚に際し、親権者とは別に監護者が定められた場合に、監護者である親が、非監護者である親(親権者)に対して子の引渡しを求める場合が考えられます。 この場合、基本的には親権(監護権)に基づく妨害排除請求権の行使として一般の民事訴訟手続によるべきという見解もありますが、民法766条、家事事件手続法39条別表第2、3号に規定する子の監護に関する処分の一態様として家庭裁判所の審判手続によるべきという見解が有力であり、実務上も、家庭裁判所の審判事項として扱われています。 したがって、親権者・監護者である親は、家庭裁判所において、子どもの引渡しを求める調停ないしは審判を申し立てることになります。 また、親権者・監護者からの請求については、人身保護請求手続によって子の引渡しを実現する方法も十分考えられます。

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