親権・監護権をめぐる法律と実務
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103第2章 親権・監護権が問題となる場面第2章 親権・監護権が問題となる場面第2 子どもの引渡し請求が問題となる具体的場面1 別居中の夫婦間における子どもの引渡し請求⑴ 未成年子の父母が、離婚はしていないものの、別居しているような場合には、未だ父母双方が未成年子の親権者ということになります。このとき、一方の親から、子どもを現在監護している他方の親に対して子どもの引渡し請求がなされる場合には、民法766条1項、家事事件手続法39条別表第2、3号の規定を適用し、子の監護に関する処分の一態様として家庭裁判所の審判事項になるとされています。  また、迅速な引渡しが必要な場合には、審判申立てと同時に、審判前の保全処分の申立ても行われることになるでしょう。  なお、その後、父母の間で離婚訴訟にまで至ったような場合には、離婚請求訴訟の附帯処分として、子どもの引渡しを求めることもできるとされています(人訴32Ⅰ)。⑵ 別居中の父母間の子どもの引渡し請求について、人身保護請求手続をとる方法も考えられますが、別居中とはいえ親権者同士の争いであること、また、前述のとおり、人身保護請求手続が例外的・補充的になされるべきであることから、人身保護請求が認められるのは極めて限定された場合になります。  この点、前掲最高裁平成5年10月19日判決は、「夫婦の一方による右幼児に対する監護は、親権に基づくものとして、特段の事情がない限り、適法というべきであるから、右監護・拘束が人身保護規則4条にいう顕著な違法性があるというためには、右監護が子の福祉に反することが明白であることを要する」と判示しています。つまり、お互い親権者同士の争いであることから、人身保護請求の要件となる拘束の「顕著な違法性」については判断基準を厳格に解し、子どもの利益・

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