民法成年年齢引下げが与える重大な影響
2/34

序 「成人」(おとな)の概念に大変革が起ころうとしています。わが国の法制においては、特に若年層を中心として、様々な立法趣旨に基づき、年齢による規制が行われています(後記一覧表参照)。その中核は、明治31年に施行された民法が「年齢20歳をもって、成年とする」(第4条)と定めていることに基づく「成年・未成年」の区別だと思われます。そして、わが国においては、「成人=20歳」という認識が長年にわたって広く定着し、個人のライフステージの設計においても、それを踏まえた様々な対応がなされてきました。ところが、現在立法化が進められている民法の成年年齢の改正においては、ほぼ120年振りに、これを18歳に引き下げることが予定されています。本書は、まず第1章で、本改正の前段と位置付けられる投票権年齢(国民投票法)や選挙権年齢(公職選挙法)の18歳への引下げの趣旨と影響を論じることを通じて、民法の成年年齢引下げの意義を考えます。その上で、18歳の若者が成人とされることによって、経済活動や消費行動において直接的に問題となる「未成年者取消権」の喪失の問題(第2章)を採り上げるとともに、未成年者保護の観点から認められた民法上の制度である「親権・養育費」(第3章)、「未成年後見制度」(第4章)と本改正の関係を論じています。また、これらに密接に関連する制度として、「児童福祉」(第6章)に対する成年年齢の引下げの影響を検討し、併せて、成年年齢と関連する民法等の他の制度(婚姻、養子、相続、遺言、民事訴訟等)への影響の有無やその内容を紹介しています(第11章)。他方で、成人となった18歳の若者が就業する場面で問題となる「労働法」について、成年年齢の引下げをどのようにとらえるかという観点から議論を進めているだけでなく(第5章)、税務上留意すべき点にまで対象を拡げて、その内容を解説しています(第10章)。

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る