架空循環取引
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型架空循環取引事例に遭遇し、調査を遂行する過程で、なぜこのような架空循環取引が企業内で長期間発覚しなかったのかを深く考えるようになった。また、複数の事例を見ていくうち、業種業態は異なるものの、そこには共通する企業風土や組織環境があることを強く認識するようになった。さらに、(循環取引に限らないが)不正発覚後に組成される社外(第三者)委員会の委員として、様々なケースを体験する中で、不正発覚後の会社の対応に関する明確なガイダンスを示す必要性を痛感した。特に会計不祥事の発覚は、その会社にとって初めての経験であることが多く、冷静かつ適切に対応しないと、二次的な損害の発生も想起されるからである。 このような積年の思いから生まれたのが本書である。ただし一口に架空循環取引への対応といっても様々な分野への広がりがあるため、当然筆者1人の手に負えるものではない。そこで筆者が主催者の1人である公認不正検査士(CFE)の「不正早期発見手法研究会」のメンバーから、法務面については弁護士の中西和幸氏、税務面については税理士の米澤勝氏に執筆をお願いし、残る会計面を筆者の執筆とし、3名の共著とした次第である。ちなみに我々3名が在籍する不正早期発見手法研究会は平成21年10月に発足。現在12名のCFEが在籍し、毎月1回集まってその時々に公表される不正事例を取り上げ、活発な意見交換を行っており、その成果は本書にも活かされている。 そもそも我々の「不正早期発見手法研究会」立ち上げの経緯は、関西地区在住のCFEの研究会である「関西不正検査研究会」に触発されてのことである。「関西不正検査研究会」は、ブロガーとしても著名な山口利昭弁護士に率いられ、同地区のCFEが集い、熱気あふれた議論を展開しておられるとのことであるが、同研究会の第2期のテーマである不正の早期発見手法の研究を東京でもやろうということで始めたのが我々の研究会である。 以上のような経緯から、本書刊行にあたり、山口弁護士には本書の巻頭の推薦の言葉をお願いした。大変有難いことであるが、講演や執筆、あるいはブログの更新等で超多忙な中、貴重な時間を割いていただいたとのことで、全く頭の下がる思いである。紙面をもってお礼申し上げる次第である。

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