架空循環取引
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37第1章 循環取引発生のメカニズムと会計上の論点—消滅を認識することができるとした。以上から、新会計基準の施行後は、有償支給取引において、支給品が支給先に支給され、それが製品として戻って来、さらに当該製品が売却されるまでは、支給元では一切収益が認識されないこととなった。これは、支給先が支給元のグループ企業であるか否かは問われない。ゆえに今後、有償支給取引における未実現利益の問題は一切起きないし、東芝のような問題が繰り返されることもない。なお、この有償支給取引の具体的取扱いは、平成29年7月20日に公表された「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」では、その本文中では示されておらず、同日に公表された、同適用指針(案)の設例として、「Ⅲ.我が国に特有な取引等についての設例」の[設例33]として示されていたが、今般、新会計基準として承認されるにあたり、適用指針の本文中に、「重要性等に関する代替的な取扱い」(「我が国に特有な取引等」という区分でなく)の中の「その他の個別事項」として追加された。(4)新会計基準と循環取引以上見てきたように、新会計基準が導入されれば、本人と代理人の区分の問題を始めとして、厳格な収益認識の基準の充足が求められるため、循環取引の防止には相当程度有効であることが分かる。唯一の懸念は、引き続き出荷基準が認められたことで、今後は特に、新会計基準の遵守が直截的に要求されない非上場企業や、上場企業であってもその監視の目が届きにくい海外子会社での循環取引の発生である。

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