架空循環取引
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36—第1編 循環取引の理論的考察会計の枠組みの中でもその適用は限定的であるべき13と述べ、出荷基準の適用に一定の制限を加えたことで極めて画期的であったが、今回の新会計基準で、これまでわが国で行われてきた実務等に配慮するということで出荷基準を認めたことは、非上場企業も含めたあらゆる企業も包含するという基準の持つ包括性ゆえの配慮とはいえ、循環取引を予防するという観点からは一歩後退の感を否めない。② その他の個別事項(有償支給取引)第2節で取り上げた東芝のケースで見た有償支給取引について新会計基準は、支給先によって加工された製品の全量を買い戻す義務を負っている場合とそうでない場合に分け、それぞれの会計処理を定めている(適用指針第104項、177項〜第181項)14。a.製品の買戻し義務を負っていない場合(適用指針第179項)有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合には、企業が当該支給品の消滅を認識することになるが、支給品の譲渡に係る収益と最終製品の販売に係る収益が二重に計上されることを避けるために、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない。b.製品の買戻し義務を負っている場合(適用指針第180項〜第181項)一方、有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合には、支給先は当該支給品に対する支配を獲得していないため、支給品を支給する企業は、支給品の譲渡に係る収益を認識せず、かつ当該支給本の消滅も認識しない。しかしながら、譲渡された支給品は、物理的には支給先において在庫管理が行われているため、支給元企業における在庫管理に関して実務上の困難さが伴うことから、個別財務諸表に限って支給品の譲渡時に当該支給品の13 それでもなお、わが国で出荷基準が認められてきた背景として、「中間報告」は以下の2点を挙げ、引渡要件の重要性や費用対効果なども踏まえ総合的に判断してきたと述べている。 ● 顧客にとって当該物品の検収作業が重要なものではない(顧客の指定場所に当該物品を納品後、短期間に自動的に検収が行われ、所有権が移転することが明らかである)。 ● 出荷日と顧客への引渡日の差異がほとんどない。14 ある企業が商品または製品を買い戻す義務あるいは権利を有している場合、一方の顧客は当該商品または製品に対する支配を獲得していないことになる(適用指針第69項)

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