架空循環取引
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32—第1編 循環取引の理論的考察顧客への財またはサービスの提供に他の当事者が関与する場合、新会計基準は、顧客との約束が、当該財またはサービスを企業自らが提供する履行義務であるのか、あるいは他の当事者によって提供されるように手配する履行義務であるのかのいずれであるかを判定するように求めている。前者の場合は、当該企業は、財またはサービスを自ら提供する本人に該当し、当該財またはサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識する。後者の場合は、当該企業は、財またはサービスを提供する代理人に該当し、他の当事者によって提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬または手数料(あるいは他の当事者が提供する財またはサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する。顧客への財またはサービスの提供に複数の当事者が関与する場合、自らが取引の本人となるか、あるいは代理人となるかを判断するポイントは、財またはサービスのそれぞれが顧客に提供される前に、当該財またはサービスを企業が支配しているかどうかである(適用指針第43-44項)。ここでいう「支配」は、上記(1)で見たような法的所有権を含む幅広い概念であるが、財に対する法的所有権が顧客に移転される前に、企業が単に一時的にのみこの法的所有権を有している場合には、必ずしも当該財を支配していることにはならない(適用指針第45項)。さらに適用指針は、企業が財またはサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたり、次の指標を充足することを要求している(適用指針第47項)。(a) 企業が当該財またはサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること。(b) 当該財またはサービスが顧客に提供される前、あるいは当該財またはサービスに対する支配が顧客に移転した後(例えば、顧客が返品権を有している場合)において企業が在庫リスクを有していること(c) 当該財またはサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること。

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