実務に対応する税務弁護の手引き
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10  序章 租税法の独自性裁決例等からして妥当であるのかを論理的に検証して必要な反論をすることが求められる。そこでは細かな知識よりも、税法全体の構造の理解、条文の趣旨の理解等が重要である。 そこで、本書は、次の構成をとる。(2) まず第1章(租税債権の発生)では、①租税債権がどのように発生するか(納税義務の成立と確定)という基本概念を概観し、②納税者が、どのようにこれを争うことができるのかという手続面を見ていくこととする。主に国税通則法の規定が対象となる。 あえて手続面を先に見ることとしたのは、実際に専門家として納税者に税務紛争に係る助言をする際には、課税庁のどのような行為(処分)に対して、どのように争うことができるのかをまずは理解しておく必要があるからである。(3) 次に、第2章(租税法解釈の基本と審判対象・要件事実・立証責任等)では、税法の基本的な解釈手法や審判対象(訴訟物)、要件事実、立証責任等について簡単に説明する。 これらは民事紛争でいえば民事訴訟法の基礎理論に相当する。様々な見解、議論があるところであるが、税務紛争実務を担当するのに最低限理解が必要な事柄を述べておく。(4) 第3章(所得税)、第4章(法人税)、第5章(消費税)、第6章(相続税・贈与税)では、これらの税目についての規定や実際の裁判例、裁決例を見る。 第3章(所得税)では、所得とは何か、所得税の10種類の所得の分類の意義、所得の帰属という概念の判定、権利確定主義の意義等について説明する。他の税目でも共通して問題になる概念が多いので、実際の裁決事例、裁判事例等も踏まえながら検討する。 第4章(法人税)では、法人税の所得算出が準拠する企業会計について、簿記上の取引、仕訳から決算書類の作成、申告書の作成に至る過程を説明し、「別段の定め」(法法22)として法人税法が規定することについて概説する。法人税の体系は膨大であるが、本書の目的からして、細かな規定よりも、まずは大

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