実務に対応する税務弁護の手引き
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9遠な方法を取るべきではない。そこで、逐一裁判所を通じなくても迅速かつ強制的に徴収する仕組みを作る。 したがって、処分によって納付すべき税額が確定した場合には、当該処分が取り消されるまでは、たとえ、真実としては当該処分が誤っていても、有効なものして扱うというシステムが採用される。すなわち、更正処分、決定処分、賦課決定処分等の課税処分は、単なる一当事者(課税庁)の他方当事者(納税者)に対する一方的な行為なのであるが、それが課税庁ないしは裁判所によって取り消されるまでは有効なものとして納税者を拘束する(公定力)。 また、徴収の場面では、裁判所の強制執行手続によらずに自力で執行をすることとする(自力執行権)。国税債権には、他の債権に対する優先権を認める(徴収法8)。(6) 課税や徴収に誤りが生じることもあるから、納税者が争う手段も設けなければならない。ただし、民事のように様々な時期、方法により訴訟提起等をできるようにはせずに、納税者自身が誤った申告を是正したい場合には課税庁に対する更正の請求という手段に限定し、また、課税庁側の処分については、不服申立期間を区切り、当該期間を徒過したら紛争を起こせないこととし、国家税収を早期に確定させる。 さらに、いきなり裁判所に提訴させるのではなく、まずは行政部内で再調査の請求(旧異議申立て)、審査請求という形で不服申立てをさせることとする。(1) はしがきで述べたように、筆者は、租税法の実務(税務)には申告税務と紛争税務があり、両者はその目的に応じて異なった対応を要すると考えている。本書は、紛争税務という切り口から租税法の構造を検討するものである。税理士が申告税務を担当する際には、課税庁の通達や質疑応答事例等の細部を理解、記憶する必要がある。これに対して、紛争税務では、細かな規定を逐一確認するというよりも、課税庁が主張する取扱いが税法の体系や条文の趣旨、判例、本書の構成4

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