実務に対応する税務弁護の手引き
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3(1) 「税法は独特で分かりにくい」という嘆息を弁護士から聞くことがある。確かに税法や租税実務は、様々な意味で民法や民事実務とは異なる。 それでは、租税法や租税実務は、なぜ、どのように、独特な面を有するのか。本章では、本書のアウトラインの趣旨も含めて、租税法の独自性について書いてみたい。(2) どのような法にも基本となる概念がある。憲法で言えば基本的人権の尊重を踏まえつつ国家と私人の利益対立をどのように調整するかという基本軸がある。民法では私的自治、契約、損害の公平な負担といった概念を用いて私人間の権利義務を調整する。 税法では、税収を必要とする国家と、担税力に応じた合理的な税負担の仕組みを求める国民との利益対立がある。国家にとって一定の税収の簡易、迅速な徴収は重要な関心事であるため、税法には、国家の便宜が色濃く反映されている。 以下、この対立軸を踏まえながら、税法を、課税要件などの実体面、税額をどのように確定させ徴収するかといった手続面に分けて概観する。はじめに1Column 一口に租税法といっても、所得税法、法人税法、租税特別措置法、国税通則法、国税徴収法等々の様々な法律がある。 租税法は、要するに国家の私人に対する金銭債権を発生させ、回収する法律である。私人間の債権の発生、債権の回収方法等を規定する民法、民事訴訟法等の構造と比較すると、各種の租税法は、次のように分類できるだろう。 債権総論=国税通則法 債権各論=各種税目の法律(所得税法、法人税法、消費税法、相続税法、租税特別措置法等)租税法の体系

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