実務に対応する税務弁護の手引き
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はじめに 税務署長、国税局長が行う課税処分に対して、納税者は、再調査の請求、審査請求、税務訴訟といった税務争訟手続によって対抗することとなる。 本書は納税者の代理人として「税務弁護」を行う専門家(弁護士、税理士)のために、税法を、税務紛争の切り口から解説したものである。主に弁護士を読者として想定してはいるが、これから税務争訟を担当する税理士にも、特に争訟手続面について参考にしていただけるように記述したつもりである。 筆者は、平成21年から平成25年までの4年間、国税不服審判所において、審査請求事案に対する調査審理を担当した。課税庁出身の職員の方々と毎日のように税法の問題について議論し、税法の面白さに魅了された。 審判所在籍中の業務は非常に楽しく、充実したものであったが、次のような問題意識も抱かざるを得なかった。 一つは、課税処分も無謬ではないということである。課税庁の担当職員は職務熱心で優秀であり、多くの課税処分は正当になされているという印象を抱いたが、一方で、誤った課税処分も決して稀ではなかった。 もう一つは、そのような誤った課税処分に対して、納税者側が適切に反論できていない場合があるということである。弁護士、税理士が代理人となっていても、適切な主張、立証がなく、審判所が事実や法解釈を掘り起こして、結果として原処分を取り消した例もあった。 そのような課税処分の実相に触れ、税務紛争を手掛ける専門的な弁護士として仕事をしたいと強く思った。 ところで、世の中で一般に「税務」というときには、納税者の日々の記帳、決算、申告、税務調査といった一連の税務申告に関する実務がイメージされるであろう。そこでの指針は、税務通達、各種の実務手引き、課税庁のタックスアンサーなど

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