「廃業」を告げられたときの対応ガイド
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は じ め に大廃業時代である。いまや、日本の法人の廃業件数は、倒産件数に数倍する趨勢となっています。その主な要因は、後継者の不在です。後継者不在の法人は127万社に達するということです。この数値は、平成29年度の経済産業省の調査により明らかにされました。後継者不在の他にも、災害からの復旧を断念したり、制度改革に対応できないなどの理由により廃業を決断する事業者が多く存在します。いずれにしても、業績が堅調で、黒字経営を維持しているような企業が廃業をせざるを得ないというのは、なんとも残念です。これらの企業の顧問をしているわれわれ税理士は、中小企業の廃業とどう向き合い、役割を果たす必要があるのでしょうか。それは単に廃業・清算の手続きをして、企業の最後を看取るという役割ではなく、どのようにすれば、企業を存続させ、次の世代に引き継がせることができるのかという「継続」のための対策を提案実行するという役割になります。本書では具体的な対策事例として、M&Aや事業転換といったものを挙げて、手続きや税務上の論点を解説しています。また、それでも廃業を選択せざるを得ない場合に備えて、廃業・清算についての実務についても取り扱っています。本書の主題は、中小企業の廃業と事業継続です。しかし、本書の本当の趣旨は、企業あるいは事業の永続発展です。中小企業は社会や地域にとってそれぞれの役割を担って存在しています。これらの中小企業を守り続け、永続企業へ導くことが、われわれ税理士に求められている使命ではないでしょうか。平成30年12月税理士 杉井 俊文

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