国外財産の移転・管理と税務マネジメント
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第3節  個人による国外財産(金融資産・不動産)投資と課税185字による国債のデフォルト・リスクの懸念、③少子高齢化社会による日本経済の回復が期待できないことへの懸念、④地震等の災害リスクの顕在化等の理由により、国内財産を国外に分散投資する傾向が顕著になっています。国際金融投資の世界では、元々、様々なリスクが多数存在することから、それらを回避するために、国際分散投資という考え方が発展してきました。数千万から数億円等の多額でまとまった金融資産は、リーマンショックに見られた信用リスクや市場リスク等の投資環境に関するリスクが顕在化したときに、投資元本自体が棄損し、減少するリスクがあります。これら投資リスクを回避し、リスクを分散させるために、財産を分けてリスクの異なる国や異なるリスクをもつ資産に投資する国際分散投資が行われています。通常、国際分散投資では、投資地域として、米国、ヨーロッパ、アジアに大別して分散投資し、通貨は米ドル、ユーロ、ポンド等の他の通貨に分散します。投資対象も預金、国債、債券などの保守的な運用対象から、上場株式、REIT(不動産投資信託)、ヘッジファンドまで多様な金融資産に分散投資し、顧客のニーズや投資目的に合わせたテーラーメイドのポートフォリオを作って資産保全と効率的な運用を図っていきます。そこで、ここでは、富裕層個人が一定の金融資産を保有している場合に、国内金融資産だけに投資するのではなく、国外分散投資を行うために、国内の保有資産を国外に移動させた場合の国外財産の動かし方とその課税関係を見ていきます。個人投資家が、金融資産を海外で保有し運用する場合に、個人の単独名義で直接、海外の金融機関に口座を設けて、海外の金融商品を購入したり売却したりすることは様々な困難を伴うことがあります。そこで、従来から富裕層個人が広く使っている方法である、プライベートバンクに「投資一任勘定口座」を開設して、プライベートバンカーに運用を任せる投資方法があります。日本の居住者(国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人)は、原則として、日本国内はもちろん国外において

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