国外財産の移転・管理と税務マネジメント
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22第1章  富裕層課税のリスクとタックスヘイブン国外転出時等課税制度1 1 制度導入の背景等有価証券等のキャピタルゲインについては、その売却をした者が居住している国に課税権があることが租税条約上原則とされています。これを利用して、巨額の含み益を有する株式等を保有したまま、譲渡所得を非課税としている国に出国し、その後に売却、贈与又は相続することにより、含み益に対する税負担を回避することが可能となっていました。こうした課税逃れを防止するために、米国、英国、フランス等の先進国においては、従来から、居住地国を出国する時において、保有する有価証券等の未実現の譲渡所得(含み益)に対して課税する制度(いわゆる「出国税」)が設けられています(次頁の図表1-2-1)。現在では簡単に移住等が可能となり、租税回避目的で出国することが容易となっていることから、日本においても、平成27年度税制改正において、国外転出者の、国外転出時における有価証券等の未実現のキャピタルゲイン(日本国内における値上がり益相当)に対して課税を行う「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」(「国外転出時課税」制度)が導入されました。また、国外転出と同様、贈与、相続又は遺贈により含み益を有する有価証券等を非居住者に移転した場合においても、居住者が保有していた時の有価証券等の含み益に課税ができなくなりますので、出国時課税と同様の趣旨により課税を行う「贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例」(「国外転出(贈与・相続)時課税」)も創設されています。1

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