外国子会社合算税制
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第1節 抜本改正の背景5(2) 平成22年度税制改正 ~資産性所得合算課税の導入等~29年度改正前の外国子会社合算税制の基本的枠組みは、22年度改正の内容を前提としている。22年度改正では、中国など諸外国が法人税率を引き下げるなかで、外国子会社合算税制の発動の基準となるトリガー税率を25%以下から20%以下へと引き下げるとともに、企業実体を伴っていると認められる統括会社(事業持株会社、物流統括会社)の所得については、会社単位での合算課税の対象外とする措置が講じられた。一方、資産性所得合算課税も導入された。ある外国子会社をみた場合に、たとえ事業実体があり、会社単位での合算課税が免除となる場合でも、配当、債券利子、知的財産権使用料といった一部の所得については、租税回避目的で人為的に付け替えられやすいことから、資産性所得として部分的に親会社の所得に合算するというものである。もっとも、その範囲については必ずしも網羅的でないとの指摘があり、外国子会社配当益金不算入の導入を踏まえた租税回避防止措置の強化という意味で充分だったかというと、だいぶ改善の余地があるとの評価を後々、課税当局側に残すことになる。(3) 平成23年度税制改正 ~キャピタルゲイン問題の始まり~23年度改正では、合算対象のベースとなる金額(基準所得金額)をわが国の法人税の規定の例に準じて計算する場合において、その規定の例から適格現物分配の規定を除外するという一見地味な改正が行われた。しかし、経済界にとっては重要な意味を有する改正である。30年度改正で導入された一定のキャピタルゲインに係る合算免除特例の議論の発端だからである。日本企業が外国の多国籍企業を買収するとする。その後、グループ会社間でシナジー効果を生み出すため、被買収企業傘下の外国法人株式を譲渡・現物分配するなど資本関係を整理するケースは珍しくない。その際に生じるキャピタルゲインは、もともとグループ外であった外国法人の株式の含み益に起因するものであり、必ずしも日本の税源が浸食されているとはいえない。しかし、譲渡・現物分配の主体がたまたま軽課税国に所在するペーパーカンパニーであった場合、適用除外基

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