外国子会社合算税制
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第1節 抜本改正の背景3この間、いくつか重要な改正があった。例えば平成4年度税制改正では、旧大蔵大臣がタックス・ヘイブンを指定・告示する軽課税国指定制度(いわゆるブラックリスト方式)が廃止され、トリガー税率(=外国子会社の租税負担割合:各事業年度の所得に対して課される租税の額/所得の金額)による判定方式に変更された。近年では、平成21年度税制改正以降の動きが重要である。これらは全て、29年度・30年度改正の底流と位置づけることができるからである。(1) 平成21年度税制改正 ~外国子会社配当益金不算入制度の導入~外国子会社合算税制の目的については諸説ある。現在も必ずしも明確になったとは言い難いが、かつては軽課税国等に設立された子会社に海外で得た利益を親会社に配当せずに溜め込み、親会社所在地国での配当課税を免れることを防ぐ、すなわち課税繰延の防止であるという考えもあった。しかし、外国子会社の利益の国内への資金還流を促進する観点から、平成21年度改正により、親会社が一定の外国子会社から受ける配当を親会社の所得に算入しない外国子会社配当益金不算入制度が導入されたため、外国子会社合算税制の目的は課税繰延防止にあるとはいえなくなった。外国子会社配当益金不算入制度は、日本への資金還流という政策効果が期待できる一方、外国子会社でいかなる租税回避行為が行われていたとしても、そこで得られた利益を原資として日本の親会社に配当を行う際には免税(正確には95%分が免税)とされるため、国外への不当な所得移転(租税回避)のインセンティブが働きやすいとの見方がある。この立場からすれば、租税回避防止措置としての外国子会社合算税制に対する期待は高まることになる。以降、外国子会社合算税制の目的は、本来、国内の親会社に帰属すべき所得であったにもかかわらず、租税回避目的で人為的に軽課税国等に設立された外国子会社に付け替えられた所得に対して課税をすることにある、すなわち租税回避の防止であるという考えが一般的になったとされる。事実、平成29年度改正の直前の平成28年度の与党税制改正大綱においても、「軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止」ということが外国子会社合算税制の趣旨として一応は確認されている。

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