仮装経理の実務対応
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140(3) カネボウ事件(2005年:平成17年)●事件の概要●同社は、かつて繊維業から起業し繊維、化粧品、薬品、食品、生活用品等の主力事業を抱える名門企業であった。バブル崩壊後から苦境に陥っていたが、粉飾決算により実際の財務状況を公表せず、平成16年初虎の子ともいえる化粧品部門を花王に売却することで再生を図るところ労働組合が反対し、最終的に平成16年3月産業再生機構に支援を要請した。同時に同社では経営浄化調査委員会が設置され、平成17年4月に過去5年分の決算を訂正し、あわせて過去の粉飾額が2,000億円超という数字が公表された事件。この粉飾決算には中央青山監査法人(当時)の同社担当公認会計士も深く関わっており、そのうち3人の公認会計士は証券取引法違反で有罪となり、同監査法人も業務停止処分が命ぜられ結果的に同監査法人は解体を余儀なくされた。【粉飾決算の手法】同社の粉飾決算は、監査法人が関与していたことから巧妙なものであったが、手法としては特異なものではない。売上に関しては、期末に小売店に返品を条件に引き渡し、売上の水増し、あるいは不良在庫(毛布)を下請けとの決算期の違いを利用して循環させ架空売上を計上した。経費では、その計上の先送りや不良在庫の過大評価による評価損の見送り等が行われた。また、経営が悪化していた子会社を本来連結対象とすべきところ取引先等に株式(名義株)を所有させ、持株比率を故意に引き下げて連結決算の対象から外し、連結決算上の同社を健全と見せかけていた。この点は、平成12年以降重視されるようになった連結決算に対応するための粉飾決算の手法として特徴的であるといえる。(3) カネボウ事件(2005年:平成17年)

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