仮装経理の実務対応
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第9章●粉飾決算の法律責任 …… 129 4 会社が破綻した場合の賠償責任(破178、民再143、更100)粉飾決算により表面上は健全な状態を見せかけていたとしても、結局は経営に行き詰まり破綻することがある。このような場合において、破綻に至った事情等が、会社の取締役等の責任による場合が少なくないことから、破産法・民事再生法・会社更生法では、それぞれの手続開始決定後に、取締役等の責任を追及する規定を置いている。これは経営破綻した企業の取締役等の責任を査定する制度であり、破産法においては、同法第178条(役員の責任の査定の申立て等)が根拠となる。具体的には、破産管財人の申立て、または裁判所の職権により、査定のための裁判が開かれて、申立人は役員の責任を示す事実関係(証拠)を提出して疎明することが要件となる。損害賠償請求権が認められ、確定すれば、取締役等に支払いの義務が発生する。この規定により、取締役等に対する責任追及を迅速で簡易に行うことができる。民事再生法第143条(損害賠償請求権の査定の申立て等)や会社更生法第100条(役員等の責任の査定の申立て等)の規定も同様である。例えば、粉飾決算による違法配当の支払いをしている場合、裁判所はその取締役等の責任に基づく損害賠償額の査定処分をすることができる。そして、この損害賠償の義務について、取締役等の財産に対して保全処分をすることもできる(破177①、民再142①、更99①一)とされている。

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