奇跡の通達改正
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はじめに 専門書にあるまじき本のタイトル『奇跡の通達改正』は、法人税基本通達の改正が公表された5月30日に、私が抱いた最初の正直な感想をそのまま表している。もっと言えば、信じ難く、けれど大変感激したのである。 通常は毎年6月に発せられることの多い主たる改正が5月に繰り上がって公表され、スピードもさることながら、その改正された基本通達の内容に驚きを禁じ得なかった。 第一弾として、法人税法の所得の計算に係る改正として同法第22条の2が新設されたときは(3月31日)、法人税法における収益に関する定めを基本通達ではなく、法人税法本体に明文化し、単に法の整備を図ったのかと、それほどの驚きはなかった。しかし、その後に続いた基本通達の改正を読んで、それは法人税法第22条の2を基本に見事に体系化されていることの布石であると気づいた。流石である。 収益を認識するということは、 ・収益の認識単位(何についての収益を計上するのか) ・収益額の算定(いくらで収益を計上するのか) ・収益の認識時点(いつ収益を計上するのか)という三要素を確定することである。 法人税法第22条の2及び収益に関する改正基本通達は、この三要素を軸に整然と体系化されている。 そして、この体系はまぎれもなく新会計基準(「収益認識に関する会計基準」)の基本原則である収益認識の単位、収益の額の算定、収益認識時点の決定という三要素にピタリと対応しているのである。 さらに基本通達の内容をよく見ると、何と新会計基準の規定にそって、双子のようによく似た規定が新設されている。

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