賃上げ・投資促進税制(所得拡大促進税制)の実務解説
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の用語の意味をきちんと理解しないと適用要件すら読み解くことができないからである。そのような状況にあって、本税制に関する解説記事を執筆する機会に恵まれたのであるが、いざ条文に正面から当たってみると極めて読みづらく、また複雑な構造になっていることを痛感した。およそ税法条文は難読・難解なものではあるが、本税制の条文規定を読み解くことはかなり骨の折れる作業である。まして租税特別措置の利用主体である企業の担当者にあってはなおさらであろう。他方で、本税制に焦点を当てた書籍類も少なく、参考とすべき情報も限られていたのではないか。 本書は、平成30年度の税制改正をふまえ、本税制の詳細に至るまで「容易かつ正確に」理解できることを主眼に執筆した。本書を読み進むことで、本税制の複雑な条文を直接読むことなく、正しい理解を得ることができると確信している。 また、本税制を理解しても実際に適用しなければ意味がない。そこで、実際に適用するためにはどのような作業が必要となるのか、申告書にはどのように記載すべきかといった実務上のポイントについても、筆者の実際の申告実務経験や関与先からの相談事例等をふまえ、ケーススタディーや申告書記載例とともに織り込んだ。本書は公開されている最新の情報をほぼ全て取り込んでおり、また本税制の細かい取扱いも含めて全ての論点を網羅した書籍に仕上がったと自負している。本書がきっかけとなって、多くの企業の実効税率の引下げに寄与することができれば幸いである。 なお、本書における意見にわたる記述は筆者の私見であって、所属する組織・団体の公式見解ではない。また、「賃上げ・投資促進税制」は公式な呼称ではない。経済産業省は「賃上げ・生産性向上のための税制」と称しているが、筆者は条文見出しを要約した「賃上げ・投資促進税制」と呼ぶことにしているだけであるので、念のため申し添える。

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