賃上げ・投資促進税制(所得拡大促進税制)の実務解説
2/22

はじめに 本書は、賃上げ・投資促進税制(所得拡大促進税制)の内容や実務上留意すべきポイントについて徹底的に掘り下げて解説した書籍であり、筆者が過去に寄稿したWeb情報誌「Profession Journal(プロフェッションジャーナル)」(株式会社プロフェッションネットワーク発行)の連載記事や速報解説の内容に大幅な加筆修正を施したものである。 平成30年2月に国会提出された「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」を見ても、本税制は、研究開発税制や設備投資促進税制などの租税特別措置と比べて適用件数が突出していることがわかる。研究開発や設備投資と異なり、給与の支払は大半の企業が行うものであり、「賃上げすれば税額控除を受けることができる」という触れ込みもわかりやすく、適用しやすい税制であると言えよう。「敷居の低い租税特別措置」とでもいうべきだろうか。 現行の政権が「賃上げを契機としたデフレ脱却・経済活性化」を目玉の政策目標として掲げ続けていることもあり、当初は3年間の特別措置とされていた本税制は、制定翌年度には早速2年間適用期限が延長され、さらに平成30年度の税制改正で抜本的改組を経てさらに3年間適用されることとなり、息の長い税制になりつつある。今後ますます多くの企業が本税制の適用を検討することとなろう。 ところが実際に適用しようとすると、実に多くのハードルが待ち構えていることに気づかされる。そもそも適用要件がわかりにくい。適用要件を判断するための金額をどのように集計すべきかわかりにくい。本税制には、固有の定義を与えられた用語が多く含まれており、まずこれら

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る